2022-2023年度 RIテーマ
「IMAGINE ROTARY」

ポリオの撲滅についてEND POLIO NOW


 国際ロータリーでは,長年にわたり,ポリオの撲滅に取り組んでいます。平成27年(2015年)時点におけるロータリーの最優先目標は,全世界でポリオを撲滅することです。

 「ポリオ」とは,日本では「急性灰白髄炎」又は「小児麻痺」とも呼ばれる病気です。ポリオは,この病気の外国語における通称で,「Poliomyelitis(ポリオマイアライティス)」の省略形(Polio)です。
 「小児麻痺」という別名もあるとおり,主に5歳未満の小児が罹患する病気ですが,その年齢以上の子供や成人が感染しないわけではありません。
 ポリオは,ピコルナウィルス科,エンテロウィルス(腸管ウィルス)属のポリオウィルス(ポリオウィルスには,抗原性の異なる1型,2型,3型の種類があります。)によって発症するウィルス感染症です。ポリオウィルスが口から人の体内に入ることで感染し,咽頭や粘膜で増殖し,リンパ節を介して血流中に入ります。その後ポリオウィルスが脊髄を中心とする中枢神経系へ達し,脊髄前角細胞や脳幹の運動神経ニューロンに感染し,これらがポリオウィルスによって破壊されると左右非対称性の弛緩性麻痺(下肢に多い)などの典型的なポリオの症状が生じます。
 もっとも,ポリオウィルスに感染しても必ずしもポリオを発症するわけではありません。感染者の90〜95パーセントは発症しません。また,感染者の約5パーセント(4〜8パーセント)では発熱,頭痛,咽頭痛,悪心,嘔吐などの感冒様症状に終始します(不全型)。
 しかし,感染者の1〜2パーセントでは上記の症状に引き続き無菌性髄膜炎を起こします(非麻痺型)。そして,感染者の0.1パーセントから2パーセントくらいの割合で典型的なポリオの症状である麻痺を生じ,その麻痺が一生残ります。さらに,麻痺を起こした患者の5〜10パーセントは呼吸筋が機能せずに死亡します。
 ポリオには治療方法はなく,予防のみが可能です。しかし,ポリオには有効なワクチンが開発されており,しかも,ワクチンにより獲得された免疫は一生涯続くと考えられています。ポリオワクチンの有効な接種が子どもたちを生涯守り続けるのです。

 インターネットで検索すると,古代エジプト王朝の石碑と碑文にポリオを思わせる記録があること,19世紀中ごろより流行の記録が報告されていること,20世紀に入ってから欧米で大流行が始まり,第2次世界大戦後に世界各地で流行したことなど,ポリオに関する解説記事が容易に見つかります。
 日本では,1940年代頃から全国各地で流行がみられ,1960年には北海道を中心に5,000名以上の患者が発生する大流行となりました。そのため1961年に当時未承認・未検定であった経口生ポリオワクチンの総計35万人に及ぶ臨床試験(ウィキペディアの記載では事実上の緊急接種と評価しています)を行い,さらに超法規的措置によって当時の旧ソ連とカナダから1300万人分の経口生ポリオワクチンを緊急輸入し,これを一斉に投与すること(このとき,世界で最初の徹底したNID(=National Immunization Day 全国免疫接種日=全国一斉ポリオワクチン投与日が実施されました。なお,NIDは後に世界保健機関(WHO)によってポリオ根絶の世界戦略として採用されました。)によって流行を急速に終息させることができました。その後,日本では患者数が激減し,1980年の1型ポリオの症例を最後に,野生型ポリオウィルスによるポリオ麻痺症例は見られていません。

 ポリオは,天然痘(1980年にWHOにより根絶宣言が出された)に続いて,WHOが根絶のために各国と協力して対策を強化している感染症です。
 ポリオは,1988年には125か国以上の常在国があり,患者は35万人発生していたと推計されていました。このため,1988年,世界ポリオ撲滅イニシアティブ(Global Polio Eradication Initiative:GPEI)が,WHO,国際ロータリークラブ,米国疾病予防管理センター(CDC),国連児童基金(UNICEF)の参加により設立され,その後の世界的な努力により,患者数は99%以上減少し,2013年には患者は406人と報告されました。そのうち常在国では160人のみの報告でした。残りはポリオの常在国から非常在国への国際的な広がりでした。2014年は,世界で3か国(ナイジェリア,パキスタン,アフガニスタン)の一部地域(過去で最も狭い地域)のみに常在しています。野生株ポリオの3つの型(1型,2型,3型)のうち,2型は1999年に根絶されました。3型の症例数は,最後の症例がパキスタンから2012年4月に報告され,今までの最低水準まで減少しています。
 とはいえ,感染者が1人でも残っていれば世界中のすべての国の人々がポリオに罹患する可能性が残ることになります。
 ロータリアンは,122カ国の20億人以上の子供たちに予防接種を提供するため,10億米ドル以上の資金と多くのボランティア労力を費やしてきました。
 そして,ポリオの常在国,資金提供団体,寄贈団体,関係機関,国内外の諮問機関との協議の結果,2013年から2018年に展開する新たなポリオの根絶・終盤戦略計画2013−2018(Polio Eradication and Endgame Strategic Plan 2013−2018)が取りまとめられ,2013年4月末にアラブ首長国連邦のアブダビで開催された世界的なワクチンに関するサミットで公表されました。これは,野生株のポリオウィルスとワクチン由来のポリオウィルスのすべての型によるポリオを同時に根絶する初めての計画です。
 しかし,この計画では55億米ドルもの費用が生じると計算されており,また,世界からポリオが根絶された状態を維持するために15億米ドルが必要になるようです。

 私たち益田ロータリークラブでも,国際ロータリーをはじめ,関係団体とともに,その趣旨に賛同し,ポリオ撲滅への協力に取り組んで参ります。なお,ロータリークラブの会員以外の皆様も,公益法人ロータリー日本財団を通してポリオ撲滅のための寄付をすることができます(詳しくはこちらをご覧ください。)。

参考文献・HP等
 国立感染症研究所感染症情報センターのHP 感染症の話 「急性灰白髄炎(ポリオ,小児麻痺)」
(http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k01_g2/k01_26.html)
 厚生労働省検疫所のHP 「ポリオについて (ファクトシート)」
(http://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2014/04240856.html)

 世界ポリオ撲滅イニシアティブのHP
(http://www.polioeradication.org/)

 医療法人及川医院のHP 「ポリオとポリオワクチン」
(http://www.oikawa-iin.jp/polio.html)

 ウィキペディアのHP 「急性灰白髄炎」
(http://ja.wikipedia.org/wiki/急性灰白髄炎)

 ウィキペディアのHP 「感染症の歴史」
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2#.E3.83.9D.E3.83.AA.E3.82.AA.EF.BC.88.E6.80.A5.E6.80.A7.E7.81.B0.E7.99.BD.E9.AB.84.E7.82.8E.EF.BC.89)

 東京東ロータリークラブのHP (NID活動報告)
(http://www.tokyo-east-rc.jp/jp/Article/Art_nid.html)

 ロータリージャパンのHP 「END POLIO NOW いまこそポリオ撲滅のとき」
(http://www.rotary.or.jp/service/polio/index.html)


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