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2017-2018年度 RIテーマ「ロータリー:変化をもたらす」

益田市役所保険課主任:森谷久美子様ご講演


 平成29年12月8日,例会において益田市役所保険課で国保の保健事業を担当されている森谷久美子様にお話をいただきました。お話頂いた内容は概略以下のとおりです。(森谷様ご講演の動画はこちらから)。

 病気にかかると当然医療費が発生します。日本では国民皆保険制度が整っていますので,どんなに高額な医療費がかかっても,保険適用の治療であれば本人の負担はひと月数万円程度で済みます。しかし,これは医療費そのものが安価であるというわけではなく,本人は医療費の一部のみを負担し,残りの大部分は各医療保険者(国民組合,健康保険組合,協会けんぽ)が支払う仕組みになっているからです。この保険者負担額(加入者1人当たりにかかる年間医療費)は,大まかな数字ですが,全国平均で,国民健康保険30万円,協会けんぽ15万円,国民後期高齢者医療100万円程度となっています。
 もっとも,全国平均で国保30万円といっても,益田市国保においては全国平均より高くなっており,一人当たり約40万円かかっています。人口が減ってきているため,国保加入者も減少してきているのですが,逆に医療費の額は年々増加しており,益田市国保をはじめ各保険制度の財政を圧迫する要因になっています。
 本日お配りした資料(「医療保険制度の体系」。ここからPDFファイルをダウンロードできます。)は,一番下の段が65歳未満(現役世代)の方々,真ん中の段が65歳から74歳まで(前期高齢者)の方々,上の段が75歳以上(後期高齢者)の方々についての調査結果となっています。前期高齢者の方々は,現役世代の方々と同じ医療保険に加入したまま,保険者間でリスク構造調整されることになっているので,現役世代の方々と前期高齢者を区別し,また,後期高齢者の方々は“後期高齢者医療保険”に加入することになっていますので,現役世代及び前期高齢者と区別しています。他方で,各保険に記載された金額は平成27年度の医療費予算です。国保・協会けんぽ・保険組合共済組合の3者それぞれの加入者はそれぞれ概ね3,500万人で拮抗していますが,国保と協会けんぽとの医療費,国保と保険組合共済組合との医療費を比べると,年齢構成上,国保が2倍となります。このことは,先ほど申し上げた一人当たり医療費「国民健康保険30万円」「協会けんぽ15万円」と整合します。
 ところで,加入者数をみると後期高齢者が約1,610万人,現役世代と前期高齢者を合わせて約1億0500万人です。後期高齢者の数は現役世代と前期高齢者の合計に対して約16パーセントです。これに対し,後期高齢者の医療費は15億円となっており,現役世代と前期高齢者の医療費合計額約19兆円の75%にも達します。
加入者数に対して割合の高いこの後期高齢者の医療費をカバーするために,現在,国保や協会健保などといった各保険者には,『後期高齢者支援金』というお金の上納が義務づけられており,益田市国保が収める『後期高齢者支援金』は例年およそ6億円です。総予算60億の益田市国保にとって10%に相当するとても大きな金額です。国保以外の被用者保険においては,年齢割合的に,おそらくもっと負担されていると思います。
 資料の裏面には医療費の将来推計を載せております。現在は棒グラフの真ん中2015年くらいとして45兆円です。毎年1億円強ずつ伸びる推計ですので10年後には60兆円を超えると予想しています。

 加齢とともに個人的に医療費が増すことは仕方がないかも知れません。
 しかし,高齢化社会が進む中,財政の安定という観点からは「仕方がない」では済まされません。「増え続ける医療費の抑制と,これからの保険制度」を考えることは喫緊かつ最重要事項といえます。そこで,各保険者にとって大きな負担となっている先ほど申し上げました「後期高齢者支援金」を利用して,国が施策を立てました。加入者の健康増進に役立つ健康診査等の実施状況に応じて,後期高齢者支援金を加算・減算するものです。保健事業を頑張れば収める支援金が減額され,ガンバリが足りなければ支援金をより多く納めなければならなくなります。ただ,国保はこの制度の対象外です。とはいえ加算減算の対象外というだけで,支援金の納付義務はあります。
 対象外であるこの加算減算制度の代わりに,国保では,保健事業の頑張りに応じて『特別調整交付金』という国からの補助金が多く交付されます。
 昨年度,益田市国保に交付された特別調整交付金のうちこのガンバリに係る(保険者努力支援制度の評価による)交付金は,約500万円でした。この額は,県内他の市町村に比べると決して高い額ではありません。財政を好転させるため,また,市民の健康増進のためにも,交付額UPを目指したいと考えております。そのために,益田市国保では,特定健康診査いわゆる特定健診(高齢者の医療の確保に関する法律18条所定の生活習慣病に関する健康診査)ですが,この健診とその後のフォローを推進しております。

 そこで,お願いですが,従業員の方々で,勤務形態によっては社会保険に加入せず国保加入の方がおられるかと思います。その方々の健康診査の受診結果を益田市国保にご提供いただきたく思います。事業所にお勤めの方であれば,加入している保険に関わらず“事業所健診”を受診される思いますが,その健診結果を益田市国保にご提供ください。これにより国保加入者の健診受診率がアップし,補助金がアップします。
 同時に,いただいた結果のそれぞれ一人ずつのデータは,責任を持って管理確認し,保健指導が必要であれば市の保健師が個別にお話をさせていただきますので,従業員の方の健康管理の面においても一助となると思います。従業員のうち誰が国保加入者なのかわからない,という場合には,その確認方法等は個別に相談させていただきたいと思います。
 なお,検診結果は個人情報ではありますが,個人情報保護法16条3項2号は,法令に基づく場合には個人情報の開示を可能としているところ,高齢者の医療の確保に関する法律27条において,保険者は事業者等に対し特定健康診査又は特定保健指導に関する記録の写しを提供するよう求めることができるとされており,かつ,事業者らには提供義務があると定められておりますので,ご提供頂くことに法律上の問題はありません。

 現在は協会けんぽなどの社会保険に加入されている方でも,退職後は任意継続を経てほとんどの方が国保に加入されることになります。この国保の運営状況の向上の為に,どうぞご協力いただきますよう,よろしくお願いいたします。




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